字を「読む」

これはデジタルではできないことだ。

書かれた文字から分かること


昔から筆跡鑑定なんてものがあるように、書かれた文字にはその人の内面が出る。

 

上手・下手は技術の問題だが、丁寧・雑は性格やその時の心理を表す。そして「雑」であるということは、それを見る人に対して情報を正しく伝えきれない。もくせい塾では生徒たちが自分の学習の記録を付け、それを私が全てチェックしている。そのコメント欄に書かれた字を読むことによって、ある程度状況がつかめるのだが、字が雑だと何を書いているのか分からないことがある。また、自分に対してもそうだ。問題を解くときに文字が雑だと、自分に対しても正しく情報を伝えきれない。だから間違える。字は丁寧であるほうがいい。

 

そして字体以上に、書く「内容」が伝える情報量は大きい。生徒がつける学習記録はマンネリ化しやすい。書式が決まってしまって毎回内容が同じの思考停止状態になっている場合もある。しかしそういう子でも、ある時何かのキッカケで書く内容に血が通い出すことがある。筆圧が強くなり、文章に彩りが添えられ、力を入れて書いたのだなということが伝わる。実はそうなった子は必ずその後成績が伸びている。

 

また、学力の高い子のコメントは「内省的」だ。学習記録の振り返りは、「何を書いてもいいよ」としてある。すると多くの子がその日やったこと、できた・できなかったことを書く。それに対し、「次はこうする」と抱負や目標を添える子はやや学力が高めで、自分の心理を振り返って書いている子は学力が非常に高い。自分の感情のような形の無いものを言語化できる能力と、客観的に自分を見つめる俯瞰の目を持っている。このように、生徒の学習記録を見るだけでもいろいろなことが分かる。

 

日によって字が大きく変わる子もいて、心理が大きく揺れ動いていることが伝わってきたりもする。だんだんしっかりした文字を書くようになっていくことは嬉しいが、逆にだんだん雑になっていく場合は注意が必要だ。勉強に対するモチベーションが下がっている。ちょうど部活動の大会が近づいていたりすることもあれば、学校の交友関係に引っ張られていたりすることをあとになって知ったりもする。そういう子には何かできないか、コミュニケーションの仕方を変えたほうがいいかなどと、ちょっと集中して見るようにしている。