さて、テスト期間中に自ら動こうとしない生徒のお世話に奔走する講師たち。その講師たちへ頭上より振り下ろされる
「ワークを失くした」
の一撃。もうオーバーキルである。
それでも健気な我が同胞たちはどうしていたか。まずは本当に無いのかの確認だ。もう一度自宅と学校、そしてカバンの中を探させる。探して来るよう伝え翌日、すぐに動かない子もいるので翌々日、さらに次の日としつこく結果を聞き、本当に無いようならば他の子から借りたワークのコピーを取って渡し、とりあえずそれで進めさせる。その際
「学校の先生に正直に失くしたことを言ってコピー提出の許可を得るんだよ」
と伝える。ただしこれは生徒が実際にやるかどうかはもう分からない。塾が代わりに学校に電話を掛けてお願いすることはできないからだ。学校の先生もそんなの戸惑うだけだ。
その後ちゃんと提出したかの確認を一応はするが、全員「出した」とは言う。だがもうお分かりの通り、その真偽は通知表が出て学校の保護者面談があり、保護者の方が学校から事実を聞くまで分からないのだ。
こうして焦土と化したテスト期間も終わり、とりあえずあと塾でできることは、テストが終わったら新しいワークを手に入れるように生徒に伝えることだ。たまに学校の先生が配布した余りをくれる場合もあるが多くの場合は購入し直すことになる。購入ができない場合はコピー提出の許可をもらうしかない(→冒頭に戻る)。
ただし、この状況になった場合の生徒が新しいワークを手に入れて他の子と同じように勉強できるようになることはほとんどなかった。その前に
「塾に通わせているのに成績が上がらない」
と、その子の保護者から退塾を言い渡されてしまうからだ。こうして私たちの「ワーク失くした」に関わる一連の戦いは幕を閉じる。