親切な脅迫

夏休みを前にして、受験生は本格的に進路を決める時期になってきました。これからオープンキャンパスや学校見学などが開催され、それらに参加する人も多いでしょう。

 

私が受けた進路選択の相談で多かったものは、「どんな進路に進めばいいのか分からない」というものです。この相談は、その場で解決できないところが辛いですよね~。「君はものつくりの仕事につくべきだ。だから機械工学科のある○○大学に進みなさい」くらいハッキリ言えればいいのですが、それはそれで無責任です(^^; 進路というのは、その人の人生です。もちろん家族の支えの上ですが、生徒が自分で決めるべきですよね。ですが、初めて自分の意思が大きく尊重される場で、本人としては責任も大きく感じることでしょう。

 

ところで、この手の相談をする生徒は、少し生真面目なタイプが多い気がします。そんなタイプの子ですから、「間違えないようにしなきゃ」という気持ちが感じられることが多いです。人生の選択において、正解か間違いかなんてものはその段階では決まらないのですけれど、本人にとっては「道を選ぶ」ことだけで一大事ですよね。

 

そこでこの写真。「速読英単語 必修編(Z会出版)」に載っている「子供の創造力を破壊する教育」という文章が興味深かったので、かいつまんでご紹介します。


赤ん坊は生れつき学ぼうとする強い意欲があるが、それは教育の過程で破壊されてしまう。大人が子どもの誤りや失敗を恐れさせ、子供が自分の考えを表現することを恐れてできなくさせている


このような内容です。人は経験を知恵として蓄えていきますが、失敗がいけないことだと教えられ続けてしまうと、失敗を恐れるあまり行動できない子供になってしまいます。上の相談をする子たちにとって、もちろん慎重なのは悪いことではないのですが、「失敗しないように」という気持ちが少し大きくなりすぎているのかも知れません。

 

そこでそんな場合、その子の周りにいる大人の私としては「間違えてもいいんだよ」という態度で接したいと思っています。もちろん進路選択をテキトーにやっていいなんて思ってません。でも、子供自身の進路を決めるにあたり、「失敗しないように」を第一義に振る舞わせるなんてちょっとなんだかなーと思ってしまうのです。

 

最近の高校は進路指導も熱心にやってくれるようですが、やれ「1学期中に文系か理系かを決めて提出」やら、「来週までに将来なりたい職業から大学の志望学部を決めて提出」やら、提出期限で子供をせかすものが多い気がします。もちろん今のご時世ニートの話などを聞くと、それで安心できる親御さんも多いと思いますので、一概には悪いこととは思いません。しかし、もしその進路指導が、「早めに目標大学を決めて勉強させる」だけのものだとするならば、「もう少し、生徒自身をみてあげて下さいよ~」と小声ながらに訴えたいと思っています。周りの大人のみなさんとしては、自分の仕事の話をするとか、もっと将来が具体的に見えるような仕掛けを施してあげて欲しいですよね。