妥協してしまった記憶

昔、塾講師は「学歴にコンプレックスのある人がなる職業だ」などと言われることもあった。

後悔しない勉強を


今は志があって塾講師をやられている方も多く、こんなのは全然当てはまらないことだと思う。

 

と、但し書きをした上で言うと、私は学歴コンプレックスのかたまりだ。今だにセンター試験の前日に全く勉強していないとか、大学で単位不足で卒業できず焦る夢を見る。

 

こうした記憶は「自分が妥協してしまった」という後悔が付随していることが多い。「あの時もっと頑張っておけば」という思いが沸き上がる。そして目覚めてから布団の中でひとりジタバタする。

 

漫画「3月のライオン」で、主人公がプロ棋士になってから高校に再入学したことを「なぜ」と問われ、「逃げなかった記憶が欲しかった」と答えるシーンがある。それに対して質問した男の子のほうは「妥協した記憶があると『自信を持て』と言われても本当の自信は持てない」と理解を示し、主人公の行動に納得する。二人の心が通じ合う美しい場面だ。

 

この主人公のように、後悔したことをもう一度やり直すのは大変だ。きっと初めてチャレンジしてやり切るよりも労力もいるし勇気もいることだろう。だから、勉強において生徒たちには「あのときやっておけば」という思いを抱いて欲しくない。受験でも定期試験の勉強でも、その時にできうる力を全て注いでやり切って欲しい。そうすれば結果がどうであれ納得でき、そして前に進める。本当に自信を持つには、自分に「やり切った記憶」が必要なのだ。勉強はそれがやりやすいコンテンツだと思う。