中学受験をした生徒の話

受験は年齢ごとにやってくるもの、その子の成長に合わせてはくれない。

受験期の塾で起こっていること


昔働いていた塾では、「中学受験生」も指導していた。

 

中学受験生つまり小学6年生は、精神面での個人差がとても大きい。正直言って「まだ早いでしょう」という子もいる。もちろん高校受験生や大学受験生でも同じなのだが、受験のプレッシャーに耐えられずに参ってしまう子もいる。その結果、普段では起こさない行動をとってしまう子が出てくる。

 

ある日、トイレ掃除をしようとトイレのドアを開けたら、ものすごい塩素臭がした。ドメストがトイレの壁中に撒き散らかされていた。ある中学受験生の子が少し前に入った後だった。トイレの板張りの壁に掛けられたドメストは、壁の塗装を溶かし、壁がアバンギャルドなまだら模様になっていた。ここに越谷のバンクシーの誕生を見た。まあ生徒に怪我があったわけではないのでちょっとした悪戯で済んだが、その行動の原因を思うと痛々しい思いがした。

 

その子は普段から爪を噛んでしまう癖があったり、目を離すとテキストをクチャクチャにしてしまうこともあった。全てが受験のせいではないとは思う、しかしその子にとって受験というものが大きくのしかっていることは明らかで、少なくともその子にとっての受験期間は、それだけの抑圧を強いるものであった。

 

結局その子は希望していた中高一貫校に進学した。小学校、中学校、高校と受験はあり、早いほど有利みたいな風潮もあるけれど、それは学歴というものにおいてのみ言えることなんだよなぁ。その子が次に受験を迎えるとしたら大学受験だ。その時までに精神的に成熟し、受験というものがトラウマになっていないことを願う。