頭が真っ白!

 

試験中、頭が真っ白になった時の対処法は、基本的に「無い」と思う。

 

「一歩引いて冷静になれ」「次の科目・問題でもっとあがけ」周りの人間は勝手なことを言う。でも、それすら考えられなくなる状態を「頭が真っ白」というのではないだろうか。

 

私は高校受験で頭が真っ白になったので、自分の経験からそう思っている。本当に何も考えられなかった。キッカケは確か数学の試験中だったと思う。序盤に解けない問題があって、それで歯車が狂い出した。

 

普段は間違える場面ではなかったので焦った。やばいやばい。どうやるんだコレ。時間ばかりが過ぎていく。周りの音は聞こえなくなるのに、自分の心臓の音だけがはっきりと聞こえる。同時に周りの景色が遠ざかる。終了時間が来て、震える手でスカスカの解答用紙を提出する。その試験が終わってからも引きずった。休憩時間中も何をしていたのか思い出せない。完全に思考停止が続いた。

 

その日の夜、塾で自己採点をした。自分が過去最低点を入試本番で出したことが分かった時に、はじめて強烈な衝撃とともに時間が動き出した。やっと日常に戻ってきたという感覚とともに、「自分は終わった」という思いも沸きあがった。

 

しかし結果は合格だった。それまでに言われていたボーダーラインの得点を20点近くも下回ったのに、その年の出題傾向が大きく変わったことが幸いしたのだろう。

 

そして何よりも、数学の試験のあとの科目でも、手だけが「動き続け」た。それまでの塾で受けていた指導のおかげだった。塾の先生方には足を向けて眠ることはできない。だから私は今自分の生徒を指導する時に、

 

「1字1句そのまま覚えなさい」

 

と言う。テストする時はその通りできなければ不合格にする。生徒からはたまに「厳しすぎる」と文句を言われることもある。

 

しかし、ウンウン唸って思い出す程度の暗記ではこうなったときに役に立たない。そしてこれこそが、頭が真っ白になった時に唯一それを乗り越える手段だとも思っている。