居眠り

分かり合えない時ってあるね。

居眠りを叱るのは悪なのか


最近は無いのだが、自習室で「居眠り」をする生徒がいる。

 

居眠りの原因には2つある。「疲労」と「弛緩」だ。部活動や夜遅くまでの勉強で休息が必要な居眠りは仕方がないと思う。しかし塾において、気の緩みから来る居眠りは根絶しなくてはいけないと思う。それが場の空気を濁すからだ。もちろん完全にどちらかということは無いだろうが、正直言ってこれらの違いは一目で分かる。弛緩している生徒は居眠りを繰り返す。

 

昔は弛緩居眠りをしていた生徒は起こし、改善が見られない場合は帰宅させていた。叱るのは1発で終わらせたいので、弛緩居眠りをしている生徒にはドカンとやっていた。それで気合が入るならよし、そうでないなら帰宅して整えなさい、と。そして「戦略的居眠り」というものを認めている。「眠いのでちょっと寝ます」と言えば特に何も言うことはない。それで寝ている高校生も昔は結構いた。何事もメリハリだ。

 

しかしある時、そんな生徒と帰宅させたあとに親御さんからメールが届いた。「ウチの子を追い詰めるな」と。私は意味が分からなかった。そのメールには、「子供が泣きながら帰ってきた」とあった。その生徒は、そこまでの経緯を省き自分が帰宅させられたことだけを伝えたのだろう。そのメールでは、「私なら居眠りしている生徒は起こさない」とあった。大学受験生が居眠りしているのを見て見ぬフリすることが、「追い詰めない」ことになるのかますます分からなかったが、その生徒を居眠りで叱るのはやめた。その生徒はその後も居眠りを繰り返した。

 

結局その生徒は、初めに志望していた一般受験をやめて推薦入試で大学に進学したが、私は大切なことを伝えられなかったと思っている。むろん、私に居眠りの経験はないかと言ったらウソになるし、それゆえ偉そうなことは言えないのかも知れない。男子高校生が塾から泣きながら帰ってきたら、保護者は私に不信感を抱くのも理解できる。ただ私は、自分がしてしまった居眠りの記憶、それにより失われた学びの機会、それを指導してくださる先生方のやる気を削ぐ振る舞い、親や兄に出してもらった学費やそれを稼ぐためにしたであろう苦労、居眠りしている生徒の横で同級生が感じていたであろう気持ち、これら全てを後悔している。