負荷が逃げていっちゃう子

悩みどころ。

夢を夢で終わらせないために

上手く言えるか分からないが、学力の、ある層を下回ると、

 

「加えた負荷に対してグニャリと曲がってしまう子」

 

というものが出てくる。学習とはトレーニングなわけだが、掛けた負荷が正しく伝わらない。そういう学力層の子というのがいる。

 

例えば英単語を覚える時に多くの人が書いて覚えると思うが、書くときに「頭に残す」ことを意識して行っていると思う。意味やスペルを頭の中で反芻して、目に焼き付けて手に覚えさせる。そして覚えたか自分で確認する。それをせずに、ただ「書く」という行為を繰り返してしまうような子がいるのだ。今、自分のやっていることの目的を理解していないというか、暗記作業をなぞるだけになってしまっている。覚えようと努めることは負荷のかかることだが、その負荷の部分がスッポリ抜けてしまって表面だけ同じに見える。人が絵を描くのではなく、機械が絵を描くような状況になっている。目的に向かった手段ではなく、手段が目的になってしまっている。あるラインを下回ると、こういう子が結構いる。

 

当然そういう子に勉強をさせようとすると、こちらが意図してかけている負荷を逃がしてしまう。しかし、「ちゃんとやりなさい」では変わらない。本人も楽しようとしているわけではなく、自然と掛けた力がグニャリと逃げていってしまうからだ。今まで生きてきた中で獲得してしまった性質なのだろう。したがって十分な学習効果が得られない。

 

早目に来てくれればまだやりようもある。できるところまで戻って、ハードルを下げて指導するという方法論は一定の効果を示す。しかし受験生になってからなど、時間制限が差し迫っている場合は悲惨だ。提示された目標に対し達成に必要な学習強度を示して指導を開始するが、上記の通り負荷がかけられない。「一定の効果を示すが間に合わないコース」を取るか「どこかで変化が表れるのを期待して負荷をかけ続けるコース」を取るかしかない。

 

以前受験まで半年という時期にこういう生徒がいて、成績が上がらないことに業を煮やした親御さんが

 

「志望校を諦めきれない」

 

とおっしゃって退塾していった。自分の力不足に対するやるせない思いはもちろん感じたが、転塾先でここまでの方法論を同様に練っていて、さらに先の手法を獲得している講師に出会えただろうか。きっとあのままウチにいても変わることは無かったと思う。しかし成績が上がらないからと言って、「本人に合わせた指導」は目標に対し逆効果であることはすでにご理解いただいていたはずだ。それだけは伝えたかった。結局伝わらなかったのけれど。

 

せめて「頑張ったけれど惜しくも届かなかった」なんていう塾側に都合の良い夢を見させられていなければいいと願う。